皆さんこんにちは
税務署職員が修正申告書を“勝手に”作成し提出 個人事業主を「説得できず」上司にバレないように…20代男性を減給処分(CBCテレビ) – Yahoo!ニュース
今回はこちらの記事を引用して元国税の筆者からなぜこのような不祥事が起きたのかその背景を踏まえて解説したいと思います。
よくいる国税OB(?)みたいに「最近の国税はレベルが低い!私が勤務していた時はこんなんじゃなかったぞ!」みたいにただこの職員を批判するのは簡単なんですが、私からはこの事件が起きた背景、過程、環境といった要因に着目してみたいと思います。
それではいってみましょう。
修正申告書を勝手に出すとはどういうことなのか?事件の背景、署内の雰囲気を踏まえた上で事件を解説します。
初めまして!筆者は
・8年間国税専門官として税務署勤務。
・新卒で地方の国税局採用でした。
・国税辞職後は外資系の会社で働いています。
・業界大手!幅広い求人&実績豊富なアドバイザーが魅力のリクルートエージェント
・各職種に精通したコンサルタントがあなたをしっかりサポートSpring転職エージェント
・外資系企業も含めた幅広い求人&専任のキャリアコンサルタントがしっかりサポートマイナビエージェント
・管理部門&バックオフィス系求人に特化した転職エージェントはMS-Japan
・未経験からITエンジニアに挑戦ネクストキャリア
転職サイト、エージェントはチャンスを広げるためにも最低でも3つは登録することをお勧めします。
修正申告書を出すとは
修正申告書を出すというのは税務調査終了後に税務署の指摘を受けた内容を含めて改めて修正申告書を作り、その内容を税務署に提出するというものです。税務署の一般調査レベルであればほとんど修正申告書の提出で税務調査は終了します。
基本的には税務調査の非違内容を納税者に人に認めてもらうことが前提なので、法律や計算根拠、判断した理由をうまく相手に説明できないと納得してもらえません。
修正申告書に応じない人は・・・
しかしながらその一方で税務調査の結果に応じない、修正申告書は出さないという人も一定数います。そういう人に対しても課税する方法はあります。更正処分です。
更正処分は「税務署の調査の結果、こういった理由によりあなたの税額は~円となります」と税務署側で納税者の納付すべき税額を決めることができます。
そうなんだ!じゃあ調査終了後に修正申告書の提出は必ずしも必要ではないんだね!
更正処分は税務署ではあまり行われないのが現状です
しかしながら更正処分は署の一般調査レベルではほとんど行われません。理由は簡単で
- 更正処分のための証拠収集に時間がかかる。
- 更正処分に対しては慎重にならざるを得ないため、決裁、処分の理由とやることが山積み。
- 更正処分に対して再調査の請求や、審査請求等をされるためさらに長期化する恐れがある。
証拠収集
納税者の取引先へ臨場したり、取引資料を文書で要求したり、納税者から提示を受けた領収証、レシート類を写真撮影したり、コピーしたり・・・とにかく時間がかかります。たかが1件あたりにですよ。
処分の理由等
処分の理由については調査担当者が起案して、それを審理専門官や付職員から色々指摘をうけて最終的に署長まで決裁をあげてそこでまた色々言われます。修正申告書なら金額が少ない事案であれば統括官の決裁で済みますが、更正処分であれば署長まで決裁をあげなくてはならないため日数もかかるし面倒です。
審査請求リスク
更正処分の場合通知を送って終わりではありません。処分の内容に納得がいかない場合、署を超えて不服審判所にまで及びます。事案がさらに長期化します。
上記の理由から署の一般調査レベルでは「更正処分は面倒だし極力避けたい」というのが税務署の実情です。
件数ノルマがあるからこんなに時間がかかる事案なんかやりたくないんですよみんな。
上記を踏まえて今回の事件を解説すると
以上のことからまず税務署では「更正処分はできるが、なるべく修正申告書を提出してもらって事案完結に持っていきたい」というのが現状です。
仮に更正処分もすんなりできるような仕組みであれば、勝手に納税者の申告書を偽造するなんてことにはならないわけです。
悪いのはこの男性職員だけなのだろうか
さてこの20代男性職員。納税者の申告書を勝手に偽造するなんてことをしでかしてたわけですが考えてほしいのはこの男性はなぜこんなことをしてしまったのかということです。20代ということから恐らく調査経験があまりない職員だったんでしょう。もし私が仮に納税者を説得できなかった場合、
- 具体的にどの部分、どの箇所について納得がいかないかもっと細かく聴取する。
- こちらの説明にわかりにくい表現がないか、説明の仕方、提示資料を極力わかりやすくする。
- 同様の事例がないか過去の調査事例で参考になるものがないか調べてみる。
- 統括官に調査結果説明のために1時間程度時間を割いてもらう。
等々この辺が思いつきます。
これは私がある程度税務署で働いていた経験があるからです。
20代の若手職員であればこういった状況をフォローしてくれる頼れる先輩職員が必要だと思いますが、税務署内はそんな職員は多くありません。
MJと言われる働かないおじさんおばさんとか
大卒なのにそんなことも知らんのかといってくるような普通科の皆さんとか
署内にはあまり頼れる職員は多くないし、同僚に仕事のことを聞きづらいような雰囲気があったんだろうなぁと想像できます。
小さい署だと20代の職員に次に若いのが40半ばの職員とか平気でありますからね。国税も高齢社会です。
研修制度が充実とは言うものの署内はあまり・・・
よく国税の説明会では「国税は研修制度が充実していますので給料をもらいながら各種法律の勉強が可能です!」なんて宣伝をしています。
税務大学校での研修は確かに充実はしていますが、署内は別です。
若手職員の育成については局から「指示文書」というものが来ていますが所々に「署の実情に応じて」という現場任せの一文が含まれています。これを解釈して署では統括官が上席任せにし、任された上席は「なんでオレの仕事増やすんだよ・・・」となってあまりやる気がありません。こんな環境で育てられた若手は質問もしづらい、調査には慣れない、結果として成長が感じられないといった環境に身を置くことになってしまいます。
この事件のあと署はどう変わっていくのか
多分何も変わらないと思います。
この事件の男性はすでに新聞沙汰になってしまいましたから、あと一生上席として署をローテーションすることが確定しました。仕事を続けるか脱出するかはこの男性次第です。
統括官も管理職としての責任から降格で同様に一生上席になるでしょう。そして同じ部門の周りの職員らは「管理職じゃなくてよかった♪」と安堵しているでしょう。
だからこの事件でダメージを負っているのは本人と統括官だけで周りの上席以下は特に被害を被っておりません。やっぱり上席が一番コスパがいいのかもしれませんね。
若手に雑用ばかりを任せた職場の末路
現在国税で成長を感じない若手職員がいたら転職をお勧めします。
現在私は外資系の企業で働いていますが手を挙げれば仕事を任せてもらえますし、海外とのミーティングへの出席も希望すれば同席できます。リスニング教材とかではない生の英語のミーティングなのでめちゃくちゃ勉強になりますし、今後の成長ににもつながると思います。
公務員から外資系企業へ転職 その具体的な道のり|貝殻 (note.com)
まとめ 事件の背景について
以上が私が考えた修正申告書を偽造し勝手に提出した事件の背景です。まったくの憶測ではなく私の8年間の税務署勤務を基にしているので割と当たっているのではないかと自負しています。
また、今回はこの事件が明るみに出ましたが面下でくすぶっている事案も探せばあるかもしれません。今回もお読みいただきありがとうございました。
私はこの国税から脱出して現在外資系企業で働いています。
公務員からの脱出プランはこちらの記事とnoteを参考にしてください。
コメント